JAFが「応急修理しません」と決めている2つの条件──チューブタイヤと、前輪です
バイクのパンクをプロが直してくれるかどうかは、運ではなく条件で決まっています。JAFが公式に修理対象から外している2つの条件と、市販の修理剤がチューブに使えるかどうかを、公式の記述で確かめました。
「パンクくらい、自分で直せないのか」
そう言われたことのある方に、先に事実だけをお伝えします。全国でバイクの救援を担っているプロの組織が、2つの条件では「応急修理をしない」と公式に決めています。 ひとつはチューブタイヤ。もうひとつは前輪です。
JAFの公式サイトには、こう書かれています。
後輪タイヤ(チューブタイヤ除く)のパンクのみ応急修理できます。
つまり、スポークホイールに多いチューブタイヤは、前輪でも後輪でも、その場では直りません。 訓練を受けた隊員が専用の機材を積んで来ても、です。これは技術の問題ではなく、そう決めてあるという話です。
そして、この記事でいちばんお伝えしたいのは次のことです。自分で直すか、呼ぶか。この二択は、そもそも設定が間違っています。 呼んでも直らない組み合わせがあり、逆に、JAF自身が「修理キットを携行しよう」と書いている。判断の軸は、道具を持つか持たないかではなく、自分のバイクがどの組み合わせに入っているかです。
プロが線を引いている2つの条件
JAFがバイクをロードサービスの対象車種に加えたのは2005年です。それから20年以上、現場の判断はかなりはっきりしています。
まず前輪について、理由が明記されています。
前輪タイヤは、再度エアーが抜けた場合にハンドルを取られ、事故につながる危険があるため、応急修理をしておりません。
応急修理は、もう一度抜ける可能性を消せません。後輪でもう一度抜ければ、挙動は乱れますが、多くの場合は減速して止まれます。前輪で同じことが起きると、ハンドルが取られます。体重を預けている側が抜けるからです。だから「直せるけれどやらない」のではなく、やらないと決めてある。ここは読み違えないほうがいいところだと思います。
次にチューブタイヤ。こちらは理由が別です。チューブレスタイヤなら、穴の開いた場所へ外から栓を押し込めば、タイヤをホイールから外さずに塞げます。ところがチューブタイヤは、空気を保っているのがタイヤの内側にある袋です。袋を直すには、袋を引っぱり出さないといけない。 そのためにはタイヤの縁をホイールから落とし、片側を外す必要があります。路上でやる作業としては、質が変わってしまいます。
そして、どちらに当てはまっても、置き去りにはなりません。
チューブタイヤおよび前輪タイヤ、応急修理できないパンクの場合、けん引・搬送で対応させていただきます。
直せない=運べない、ではないということです。JAFは2022年1月5日から、レッカー車にバイク専用の「二輪アタッチメント」を装着した車両の全国運用を始めており、バイクを運べるサービスカーは運用前の約2.5倍になったと公表しています。
金額で見ると、判断は思ったより単純です
ここは冷静に数字を並べたほうが早いところです。すべてJAF公式の掲示(2025年7月現在の表示)です。
| 会員 | 非会員 | |
|---|---|---|
| パンク応急修理(夜間・一般道・1本) | 無料 | 25,630円 |
| けん引/搬送(夜間・一般道) | 20kmまで無料 | 27,700円〜 |
けん引の超過分は1kmごとに830円が別途かかります。そして会員の費用は、入会金2,000円・年会費4,000円です。
ここで気づくことがあります。非会員でパンク1回を呼ぶと、会員5年分の費用を上回ります。(入会金2,000円+年会費4,000円×5年=22,000円) さらに、けん引が必要な組み合わせ(=チューブタイヤや前輪)に乗っている人ほど、非会員だと高いほうの金額に当たります。チューブタイヤのバイクに乗っていることと、ロードサービスに入っておくべき度合いは、きれいに比例します。
なお、これはJAFだけの話ではありません。任意保険にロードサービスが付帯している場合が多く、その場合は保険会社側を使うほうが早いこともあります。自分がどちらを持っているのか、持っているなら搬送距離が何kmまでかを、今日のうちに確かめておくのがいちばん確実です。
「修理剤はチューブに使えない」は、公式の説明と違いました
コメント欄で複数の方が書かれていた内容に、メーカー公式と食い違うものがありました。要旨はこうです。「注入するタイプのパンク修理剤は、チューブタイヤには通用しない」。
これは製品によります。国内で広く売られているホルツ「タイヤウェルド」の公式サイトには、こう書かれています。
タイヤウェルドはチューブタイヤにも使用できますか? 使用はできますが、中のチューブの破損が激しい場合は補修できない可能性があります。
「使えない」ではなく、使えるが破れ方によるというのが正確なところです。JAF側の説明も一致しています。
この液剤を注入するタイプにはチューブレスタイヤ、チューブタイヤのどちらにも対応できる製品もありますが、いずれも応急処置用であるため、その後はタイヤ交換などの本格的な処置が必要です。
ただし、過信もできません。同じホルツ公式には、修理できる範囲も明記されています。
2~3ミリの穴までが補修可能です。裂けたキズにはご使用いただけません。
つまり、釘を踏んだ小さな穴には効き、裂けた傷には効かない。コメント欄に「そういう時に限って穴ではなく亀裂になっていて、結局チューブ交換が必要だった」という体験が書かれていましたが、これは製品の説明どおりの結果です。効かなかったのではなく、最初から対象外だったということになります。
ここは表現を正確にしておきたいところです。「チューブには使えない」は言い過ぎ、「チューブなら安心」も言い過ぎ。効くのは2〜3ミリの穴までで、裂けたら対象外。この線引きだけ覚えて帰っていただければ十分です。
抜けかたが違うので、気づきかたも違います
もうひとつ、チューブとチューブレスで決定的に違うのが空気の抜けかたです。JAFはこう説明しています。
チューブレスタイヤの場合、異物が刺さってパンクしても、徐々に空気が抜けていきます。しばらく気づかないことも多いので、走行前点検に加えて、空気圧はこまめに確認し、減り方が早い場合はパンクを疑ってください。
チューブタイヤの場合、パンクすると一気に空気が抜けていきます。そのまま走るとチューブやホイールを痛めてしまうだけでなく、走行に支障をきたすため危険です。
どちらが良い・悪いという話ではありません。 チューブレスは気づきにくいかわりに、走りながら気づける。チューブはすぐ分かるかわりに、分かった時にはもう走れない。性格が逆なだけです。
この違いから、その場での初動も変わります。 JAFが見出しにして注意しているのが、次の点です。
クギ等の異物はすぐには抜かないで!
チューブレスタイヤであれば、刺さったクギが栓の代わりになっていることがあります。抜いた瞬間に、栓が無くなります。 JAFはこの場合、指定の空気圧まで入れて、しばらく置いて圧が安定していれば、急発進や急ブレーキを控えて速度を抑えながらバイク店へ向かう、という手順を案内しています。逆に言えば、圧が保たなければその時点で終わりです。 抜くかどうかを判断するのは、バイク店に着いてからで間に合います。
そしてJAFは、どちらであってもこの一文で締めています。
なお、どちらのタイヤも空気が抜けきってしまった状態では走れません。迷わずJAFに救援依頼をしてください。
コメント欄には「パンクしたまま30km近く走って自転車屋までたどり着いた」という体験談もありました。面白い話ですが、真似する話ではありません。 タイヤメーカー側の説明も同じ方向です。ダンロップ(住友ゴム工業)の公式サイトは、パンク・バーストについて「そのままの状態で走行することは大変危険です」とし、ロードサービスを呼ぶことを案内しています。
いま、現物で確かめられること
道具を買う前に、今日のうちにできる確認が3つあります。1と2は、ガレージで数分あれば終わります。
1. 自分のタイヤがチューブ入りかどうかを、推測ではなく表示で確かめる
サイドウォールに TUBELESS または TUBE TYPE と刻まれています。「スポークホイールだからチューブ」と決めつけないでください。スポークのままチューブレスにしているメーカー純正の車種があります。 コメント欄でも、リムに穴が来ない工夫をしている例が具体的な車種名で挙がっていました。自分の車体で読んで確かめるのが確実です。
2. 前輪と後輪で、表示が同じかどうかを見る
前後で違う場合があります。 後輪だけチューブレスという構成の車種が実在します。この場合、JAFの線引きに照らすと「後輪なら直る可能性があり、前輪なら搬送」という、同じ車体の中で扱いが変わる状態になります。
3. 加入しているロードサービスの搬送距離を調べる
会員証か、任意保険の証券・アプリを見てください。見るのは「何kmまで無料か」の1点だけです。JAF会員なら20km。
ここで誤解しやすいのが起点です。この20kmは「自宅から」ではなく「動けなくなった場所から」です。 自宅から200km離れたツーリング先で止まれば、無料の範囲で運べるのはそこから20kmまで。遠出をするほど、超過分(1kmごとに830円)が効いてきます。 近所の通勤と、九州を一周するツーリングとでは、同じ会員証でも意味がまるで違うということです。
この3つが分かって初めて、修理キットを買うかどうかの話になります。 順番を逆にすると、自分のタイヤに使えない製品を買うことになります。
コメント欄から
いただいた184件(返信を含む)のうち、いちばん多く出てきた単語は「ビード」でした。19件。チューブレスかチューブかという対立軸より、ホイールの縁からタイヤを外して、また嵌められるのかという一点に、経験者の関心が集まっていました。
ちゃんと自分でビード出せないと自分作業は危ないけどね。それに慣れてないとチューブも必ずと言って良いほどにタイヤレバーでチューブを噛むという必殺技が炸裂すると思う。
「チューブを噛む」。せっかく交換した新しいチューブを、タイヤレバーで挟んで穴を開けてしまう失敗です。これが起きると、直しに行った作業で、直す前より悪い状態になります。路上での失敗が怖いのは、この不可逆性のほうだと思います。
元タイヤ販売業の方からは、条件をさらに細かく分ける指摘がありました。
一概にスポークって言ったってタイヤによる。オフタイヤ等の薄く柔らかいタイヤと硬いロード用とは全く別物。元タイヤ屋だけどビードをボロボロにしてSOSなんてたまにある。沼る前にプロへは間違いないよ。
同じ「チューブタイヤ」でも、硬さがまるで違うという話です。オフロード用の柔らかいタイヤで身につけた感覚を、硬いロード用にそのまま持ち込むと歯が立たない。「できる/できない」はライダーの腕だけでなく、履いているタイヤ側にも属しているということになります。
いっぽうで、チューブレス化して問題が起きていないという報告も4件ありました。
私はチューブレス化をして大変満足しています。(中略)旅先で釘踏み程度のパンクなら自分で直せるメリットはやはりデカいですね。まめに空気圧のチェックはしていますが、エア漏れもチューブタイヤの頃と変わらないし、しっかりと施工してくれるショップさんにお任せすればなかなか良いですよ。
この方が書かれている条件が重要です。「しっかりと施工してくれるショップさんにお任せ」、そして「まめに空気圧のチェック」。うまくいっている人は、うまくいく条件を満たしているという、当たり前ですが見落とされやすい話です。スポークホイールをチューブレス化できる条件そのものは、別の記事で整理しています。
最後に、いちばん「いいね」が集まったコメントを挙げておきます。116件でした。
昔、山奥でパンクした時、タイヤの中に草詰め込んで、帰宅した猛者がいる。
笑い話として最高で、手本としては最悪という、この記事の内容を1行に圧縮したような投稿でした。
関連する道具
上の「現物で確かめられること」の1と2を済ませた方だけ、ここから先が意味を持ちます。自分のタイヤの種別が分からないうちに買うと、使えない製品を持ち歩くことになります。
JAF公式も、携行そのものは勧めています。
すぐに駆け込めるバイク店が見当たらないような山中などでパンクしてしまった場合でも、パンク修理キットを携行していれば応急処置ができます。タイヤの種類によっては使えない製品もあります。
PR
バイク用 パンク応急修理剤・修理キット
買う前に3つ確認してください。①自分のタイヤの表示(TUBELESS か TUBE TYPE か。前後で違う車種があります)②その製品がチューブタイヤに対応しているか(対応品と非対応品が同じ棚に並んでいます)③容量と適合排気量(ミニバイク用と中・大型用で別製品です)。なお、注入タイプで塞げるのは2〜3ミリの穴までで、裂けた傷には使えません。使用後は応急処置扱いなので、タイヤ交換などの本格的な処置が別途必要になります。
価格・在庫・適合は変わります。購入前に販売ページでご確認ください。
出典
引用元
- JAF「バイクのロードサービス」(後輪タイヤ(チューブタイヤ除く)のパンクのみ応急修理できます/ただし、後輪タイヤにおいてもタイヤの損傷状態によって応急修理できない場合があります/前輪タイヤは、再度エアーが抜けた場合にハンドルを取られ、事故につながる危険があるため、応急修理をしておりません/チューブタイヤおよび前輪タイヤ、応急修理できないパンクの場合、けん引・搬送で対応させていただきます/2005年(平成17年)にロードサービス対象車種に二輪車(バイク)を加えて/二輪アタッチメント装着レッカー車は2022年1月5日より順次全国で運用を開始しバイク搬送が可能なサービスカーが運用前から約2.5倍増加/料金表示はパンク応急修理 会員なら1本無料・入会していない場合25,630円、けん引/搬送 会員なら20kmまで無料・入会していない場合27,700円〜、けん引料830円(1km毎)別途):jaf.or.jp
- JAF クルマ何でも質問箱「パンクしたときの対処法」(チューブレスタイヤの場合、異物が刺さってパンクしても、徐々に空気が抜けていきます/チューブタイヤの場合、パンクすると一気に空気が抜けていきます。そのまま走るとチューブやホイールを痛めてしまうだけでなく、走行に支障をきたすため危険です/どちらのタイヤも空気が抜けきってしまった状態では走れません/クギ等の異物はすぐには抜かないで/タイヤの種類によっては使えない製品もあります/この液剤を注入するタイプにはチューブレスタイヤ、チューブタイヤのどちらにも対応できる製品もありますが、いずれも応急処置用であるため、その後はタイヤ交換などの本格的な処置が必要です。ページ表示は2025年07月現在):jaf.or.jp
- JAF「個人会員について」(入会金 …… 2,000円/年会費 …… 4,000円):jaf.or.jp
- 武蔵ホルト「タイヤウェルド」製品ページ(タイヤウェルドはチューブタイヤにも使用できますか? 使用はできますが、中のチューブの破損が激しい場合は補修できない可能性があります/2~3ミリの穴までが補修可能です。裂けたキズにはご使用いただけません/使用後は速やかに本修理を行ってください):holts.co.jp
- ダンロップ(住友ゴム工業)「パンク・バースト」(パンクやバーストをしてしまったら、そのままの状態で走行することは大変危険です/速やかにクルマを路肩に寄せて停車させ、ロードサービスを呼びましょう。※四輪向けの解説ページです):tyre.dunlop.co.jp
確認できていないこと
- 任意保険に付帯するロードサービスの搬送距離。保険会社・商品・特約ごとに異なり、各社の約款まで突き合わせてはいません。記事では「自分の証券で確かめてください」という案内にとどめています
- JAFの料金が昼間・高速道路・休日でどう変わるか。引用したのはいずれも「夜間・一般道」の表示額です。現場の状況により料金が異なるとJAF自身が注記しています
- 「後輪だけチューブレス」の構成を採る車種の、現行モデルでの一覧。コメント欄で具体名が挙がっていますが、年式によって仕様が変わるため、各メーカーの当該年式の諸元で確認する必要があります
- チューブタイヤにパンク修理剤を使った後、タイヤやチューブが再使用できるかどうか。ホルツ公式は「速やかに本修理を」とだけ記しており、再使用の可否までは書かれていません
- JAFの応急修理が実際に成功する割合。公表された数値は見当たりませんでした
本記事のチェックポイント
- JAFが応急修理の対象としているのは後輪かつチューブレスの組み合わせだけです
- 前輪を断る理由は明示されています。再びエアが抜けたときにハンドルを取られるからです
- チューブタイヤは前後どちらもけん引・搬送になります。直らないだけで、運んではもらえます
- 非会員のパンク応急修理は25,630円。会員は入会金2,000円・年会費4,000円で、けん引は20kmまで無料です
- 注入式の修理剤はチューブにも使える製品があります。ただし塞げるのは2〜3ミリの穴までで、裂けた傷は対象外です
- 抜けかたは逆の性格です。チューブレスは気づきにくいが走れる、チューブはすぐ分かるが走れない
- 無料けん引の20kmは動けなくなった場所が起点です。自宅からの距離ではありません
- チューブレスで刺さったクギは、その場で抜かない。栓の代わりになっていることがあります
- 今日やることはタイヤの表示を前後とも読むことと、自分の搬送距離を調べることの2つです
