「丸く、滑らかで、剛い」──アライがR75を捨てない理由
アライの全モデルが守っている曲率半径75mm以上という制約。それが何のための数字なのか、アライ公式の記述から整理します。突起物やエアロパーツの扱いにも一貫した考え方があります。
「なんでアライのヘルメットは、どれも丸いのか」
デザインの好みだと思っていた方もいるのではないでしょうか。この記事で確かめたいのは、この丸さが「守らなければならない数字」として決められているという点です。
アライ公式の表記を引用します。
全モデルで曲率半径75mm以上の連続した凸曲面で構成された「R75 SHAPE」を採用
好みではなく、制約です。 順番に見ていきましょう。
「かわす」という言葉
アライの説明で中心にあるのは、かわすという言葉です。定義も公式に書かれています。
ヘルメットが障害物にぶつかった瞬間、ヘルメットが動きを止めず、引っかかりもせずにすべり続ける性能
すべる事で衝撃を分散させながらエネルギーを減衰させる
ここは、体で考えると分かりやすいところです。
転倒して頭が路面に当たったとき、そこで止まってしまうと、勢いが全部そこにぶつかります。 逆に、滑り続けてくれれば、力は時間をかけて逃げていく。
同じ速度でぶつかっても、止まるか滑るかで、頭に来る力はまったく違う。 だから表面は、引っかかる場所を持ってはいけない、という理屈になります。
順番が決まっている
アライの考え方で特徴的なのは、優先順位が明示されていることです。
衝撃はできる限りかわす。そして、かわしきれなかった分を吸収する。
まず、かわす。吸収は、そのあと。
ヘルメットの話をするとき、私たちはつい「衝撃吸収」から入ります。ですがアライの説明では、吸収は2番手に置かれています。
そして帽体の役割は、こう書かれています。
丸く、滑らかで、剛い
丸く滑らかな帽体に強靭さを与え、柔らかいスチロールを組み合わせることで
素材はFRPと発泡スチロール製衝撃緩衝ライナの組み合わせ。硬い殻と柔らかい中身、という二層構造そのものは各社共通ですが、アライは殻の「形」に条件を課しているところが違いです。
この記事で確かめた範囲
60秒の動画では、R75という数字までしか触れられませんでした。 この記事では、その数字が何のためにあるのかを、アライ公式の記述から確かめています。
突起物は、どうするのか
この考え方に立つと、表面に付ける部品はすべて敵になります。ベンチレーションの部品も、エアロパーツも、引っかかりの原因になり得るからです。
では、付けないのか。付けたうえで、外れるようにしています。
ヘルメットに装着されるエアロパーツも転倒の際の衝撃で外れることにより、より広く滑らかな面で衝撃を受けることが可能にしています
ぶつかった瞬間に部品が飛んで、なめらかな面に戻る。
これは、壊れることを織り込んだ設計です。部品が外れるのは故障ではなく、そういう仕事をしたということになります。
「アライは通気を軽視している」という言われ方をすることがありますが、公式の記述を読む限り、そういう話ではありません。 通気は取る。ただし、かわす性能を落とさないやり方で取る。 順番の問題です。
R75と、かぶり心地は別の話
ここは正直に補足しておきます。
R75は外側の形の規定であって、内側の頭の形とは別です。「アライは頭に合わない」「SHOEIのほうが合う」という声がありますが、それは内装と帽体内部形状の話で、R75とは直接関係しません。
日本人でも、頭の形は人によってかなり違います。 丸型に近い方、前後に長い方、幅の広い方。どのメーカーが優れているかではなく、自分の頭がどちらに近いかの問題です。
- 必ず、かぶって選ぶ
- 5分ではなく、できれば10分以上かぶったまま様子を見る
- メガネをかける方は、実際にメガネをかけた状態で
- 痛くなる場所が1点でもあれば、長距離では耐えられません
R75の話を知ってから店に行くと、帽体の丸さと、自分の頭の形は別問題だと切り分けて考えられるようになるのではないでしょうか。
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アライ フルフェイスヘルメット
頭の形との相性が大きく分かれるメーカーです。初めてアライを選ぶ場合は、店頭で10分以上かぶって、痛くなる箇所が出ないか確かめてからの購入を強くおすすめします。メガネの方は、かけた状態で試してください。
価格・在庫・適合は変わります。購入前に販売ページでご確認ください。
まとめると
アライの設計は、一本の考え方で貫かれています。
かわす性能を最優先し、そのために表面をなめらかに保つ。付けるものは外れるようにする。かわしきれなかった分だけを、中の発泡スチロールが受け持つ。
「丸いから性能が高い」のではなく、「かわすために丸い」。 そう理解すると、あの形が納得できるものになると思います。
コメント欄から
この動画には125件のコメントをいただきました。いちばん多くのいいねを集めたのは、技術の話ではありませんでした。
去年、右直事故に巻き込まれました。その時に被っていたのは Arai RX‑7X。頭を強く打ち、健忘症で事故当時の記憶は一切ありません。それでも怪我は骨折だけで済みました。命を守ってくれたこのヘルメットのおかげで、今年23歳を迎えられました。
この記事で書いてきた「かわす」という設計思想が守ろうとしているものの、実例だと思います。 付け加える言葉はありません。ご無事で何よりでした。
昔はアライのデザインやシルエットが好きになれなかったけど、お店の人に「たぶんお客さんはアライ頭だから試しに…。」と勧められて被ってみたらフィット感が堪らんかったですね。
「アライ頭」という言葉が出ましたが、これは記事の「R75と、かぶり心地は別の話」の実例です。外側の丸さは全員共通の制約、内側のフィット感は人それぞれ。店頭でかぶってみるまで、自分がどちらのメーカーの頭かは分かりません。 この方のように、見た目の好みが後からついてくることもあるようです。
アライとショウエイはどっちがいいんだ
この質問に順位で答えることは、この記事ではしません。 両方とも世界の一線級で、コメント欄にも「アライとSHOEIはライダーの世界基準」という声がありました。分かれるのは性能の優劣ではなく、設計思想(アライは「かわす」を最優先に形を縛る)と、あなたの頭の形との相性です。答えは店頭で10分かぶった側にあります。
出典
引用元
- アライヘルメット公式「R75 SHAPE」(曲率半径75mm以上の連続した凸曲面/かわす=ヘルメットが動きを止めず引っかかりもせずにすべり続ける性能/すべる事で衝撃を分散させながらエネルギーを減衰させる/衝撃はできる限りかわす。そして、かわしきれなかった分を吸収する/エアロパーツも転倒の際の衝撃で外れる):arai.co.jp
- アライヘルメット公式「安全について」(丸く、滑らかで、剛い/丸く滑らかな帽体に強靭さを与え柔らかいスチロールを組み合わせる/FRPと発泡スチロール製衝撃緩衝ライナの組み合わせ/全モデルでR75 SHAPEを採用):arai.co.jp
注記
- かぶり心地・頭部形状の適合についての記述は、一般的な選び方の解説です。アライ公式の記述ではありません。
本記事のチェックポイント
- R75は好みではなく、全モデルが守る制約です
- 「かわす」=引っかからずに滑り続けること。 滑ることで力を逃がします
- 優先順位が明示されている。まずかわす、それから吸収する
- 表面の部品は、当たった瞬間に外れる設計。壊れるのが仕事です
- R75と、頭に合うかどうかは別の話。 必ずかぶって選んでください
