「高出力バイクへの取り付けは推奨しません」──Appleが公式に書いたスマホと振動の話
37万回見ていただいた動画の補足です。バイクの振動でiPhoneのカメラの性能が低下するおそれがあることを、Appleが公式文書で案内しています。何がどう壊れるのかをAppleの原文から整理し、動画で扱ったカエディアという会社について、コメント欄の疑問も含めて確認できたことを書きます。
「バイクにスマホを付けていたら、カメラがおかしくなった」
都市伝説のように聞こえますが、違います。Appleが公式文書で注意喚起している現象です。
特定の周波数範囲で振幅が大きい振動 (とりわけ、オートバイの高出力エンジンの振動) を iPhone が受け続けると、カメラシステムの性能が低下するおそれがあります。
動画では、この問題を追い風に伸びた神奈川のバイク用品メーカー「カエディア」を扱いました。この記事では、まずAppleが何をどこまで言っているのかを原文から整理し、そのあとでカエディアという会社について確認できたことを、コメント欄でいちばん多かった疑問への答えも含めて書きます。
Appleの文書には、何が書いてあるのか
該当する文書のタイトルは「オートバイの高出力エンジンなどの振動を受け続けると iPhone のカメラに影響することがある」。Appleサポートの公式ページです。
影響を受ける場所として挙げられているのは、2つの部品です。
1つめが、光学式手ぶれ補正(OIS)。 レンズを動かして手ぶれを打ち消す仕組みです。
2つめが、クローズドループAF。 原文にはこうあります。
クローズドループ AF では、基板上の磁気センサーが重力や振動による影響を測定してレンズの位置を判定するので、ぶれを補正する動きが正確に設定されます。
共通点が見えるでしょうか。どちらも、レンズを「動かして」いる部品です。
写真がぶれないのは、レンズが固定されているからではありません。逆です。細かく動き続けて、ぶれを打ち消している。 そこにエンジンの振動が長時間入り続けると、こうなります。
高振幅の振動を長時間直接受け続けると、これらのシステムの性能が低下し、写真や動画の画質の低下につながるおそれがあります。
「推奨しません」とまで書いている
この文書で注目すべきは、表現の強さです。
高出力または大排気量のエンジンを搭載したオートバイは、特定の周波数範囲で振幅の大きい振動を生じるため、そうしたオートバイに iPhone を取り付けることは推奨されません。
性能低下の「おそれ」ではなく、取り付け自体を「推奨されません」。 メーカーがここまで書くのは、かなり踏み込んだ表現だといえます。
では、原付やスクーターなら安心かというと、そうでもありません。
原動機付自転車やスクーター、ドローンなど、低排気量のバイクや電気エンジンを搭載したバイクに iPhone を取り付けた場合、振動の振幅は比較的小さくなる場合がありますが、iPhone 本体や OIS/AF システムの損傷のリスクを軽減するため、防振マウントやジンバルの使用をおすすめします。 また、損傷のリスクをさらに回避できるよう、長期にわたる常用は控えた方がよいでしょう。
整理すると、Appleの立場はこうなります。
- 大型・高出力のバイク → 取り付け自体を推奨しない
- 原付・スクーター・電動 → 付けるなら防振マウントを。それでも長期の常用は控えめに
ひとつ注意したいのは、Appleは「高出力」「大排気量」の具体的な線引き(何cc以上、何ps以上)を示していないことです。自分のバイクがどちら側かは、文書からは判定できません。振動の大きい単気筒・二気筒は排気量にかかわらず慎重に考えたほうがよい、というのが安全側の読み方だと思います。
対象となる機種も文書に明記されています。OISはiPhone 6 Plus・6s Plus・7以降(SE第2・第3世代を含む)、クローズドループAFはiPhone XS以降。つまり、近年のモデルの多くが該当します(ただしiPhone 11以降の超広角カメラなど、OISを搭載しないカメラもあると注記されています)。
「2021年の警告」について
動画では、この警告が出たのを2021年と紹介しました。当時そのように報じられたためですが、現在のApple公式ページの公開日表記は「2023年11月」となっており、初出の日付は文書上では確認できませんでした。 内容は現在も公開されている現行の案内です。
カエディアについて、確認できたこと
動画で扱った「カエディア」の会社概要は、公式サイトに次のように記載されています。
- 社名:株式会社Kaedear
- 創業2019年1月、設立2020年10月
- 所在地:神奈川県横浜市緑区
- 代表取締役:飯沢智博氏
- 事業内容:バイク用品の企画・開発・販売
社名は、本拠地である横浜市緑区の区の木「楓(かえで)」と「Dear」を組み合わせたものだと説明されています。
創業から数年で、ECサイトで存在感のある売れ筋ブランドになった、というのが動画の骨子でした。ECサイトのランキング実績は同社自身が掲げているものなので、この記事では「同社の主張」として扱います。
コメント欄から──「日本のメーカーなの?」
この動画には130件を超えるコメントをいただきました。そして、いちばん多くのいいねを集めたのは、称賛ではなく疑義でした。正面から扱います。
いちばん多くのいいね(321件)を集めたのは、「本当に日本のメーカーなのか。海外で作られた製品を売っているだけではないのか」という趣旨の疑問でした。「企画と設計は日本で、製造は海外」という補足コメントも付いています。
この疑問には、カエディア自身の説明で答えられます。 公式サイトのブランド紹介ページに、こうあります。
お客様アンケートやマーケットデータ、バイカーの皆様のお悩みを基に製品を開発。プロが見ても納得できるよう、信頼のおける工場と細部まですり合わせ製品化しております。
つまり、自社で企画・開発し、製造は外部の工場と組んで行う——同社はそのことを隠していません。会社概要の事業内容も「企画・開発・販売」です。設計を自社で行い、製造を協力工場に委ねる形は、家電でもカメラでも広く行われているものづくりの形です。「どこで作るか」と「誰が設計し、品質に責任を持つか」は別の問題——ここが、この疑問へのいちばん誠実な答えだと思います。なお、製造国の明記までは確認できていません。
バイク用品は全部カエディアになった。しかも安くて良い物を作る。後、問い合わせ対応が早い。午前送ったメールが午後には返答が来る。
一方で、実際に使い続けている方の評価も多数ありました。「バイク復帰したタイミングで見つけてから使い続けて、知り合いに紹介しまくってた」という声がある一方、「安かろう悪かろうのイメージしかない」というバイク店勤務の方の声もあり、評価は割れています。両方あることを、そのまま載せておきます。
デイトナから結構前から売ってたけど、そこまで高くなかったような?
動画では市場を「高価な海外ブランドか、粗悪品か」の2択として描きましたが、デイトナやミノウラ、サインハウスなど、国産の選択肢は以前からあったというご指摘です。その通りだと思います。60秒の尺で単純化した部分であり、「2択しかなかった」は言い過ぎでした。 ここは記事で補正しておきます。
買う前に確認する軸
メーカーの順位付けはしません。Appleの文書から逆算すると、確認すべき軸はこうなります。
- 防振機構があるか。 Appleが名指しで推奨しているのは「防振マウント」です。ホルダー本体とは別に、振動吸収ユニットを挟む方式もあります
- 自分のバイクはどちら側か。 大排気量・高出力なら、そもそも「推奨されません」側です。防振があっても万全ではありません
- 保証とサポート。 壊れるのはスマホ側です。ホルダーの価格差より、対応の速さが効きます
- ナビの常用が前提なら、スマホ以外の選択肢も。 古いスマホをナビ専用機にするのは、メイン機のカメラを壊さないという意味で現実的な回避策です
いま、手元で確かめられること
- 自分のiPhoneが対象か見る。 設定 → 一般 → 情報でモデル名を確認。6 Plus・6s Plus・7以降ならOIS搭載、XS以降ならクローズドループAFも搭載です
- カメラの現状チェック。 明るい場所で近くの文字を撮ってみて、ピントが行ったり来たりして合わない・撮った写真が全体に眠いなら、AF/OISが弱っているサインの可能性があります
- いま使っているホルダーを見る。 スマホとバイクの間に、ゴムやバネなど「柔らかい層」が1つでもあるか。金属とツメだけで直結されているなら、振動はほぼ素通しです
PR
カエディア クイックホールド スマホホルダー
モデルによって対応スマホサイズとマウント径が異なります。振動対策を重視する場合は、防振ユニット(アブソーバー)付きのモデルか、後付けできる構成かを確認してください。
価格・在庫・適合は変わります。購入前に販売ページでご確認ください。
PR
スマホホルダー用 防振ダンパーユニット
ホルダーとの接続規格(ボール径など)が合わないと取り付けられません。お使いのホルダーのマウント形状を確認してから選んでください。
価格・在庫・適合は変わります。購入前に販売ページでご確認ください。
出典
引用元
- Apple公式サポート「オートバイの高出力エンジンなどの振動を受け続けると iPhone のカメラに影響することがある」(特定の周波数範囲で振幅が大きい振動をiPhoneが受け続けるとカメラシステムの性能が低下するおそれ/クローズドループAFは基板上の磁気センサーがレンズ位置を判定/高出力または大排気量のオートバイへの取り付けは推奨されません/原付・スクーター等は防振マウントやジンバルの使用をおすすめ・長期の常用は控える/OISはiPhone 6 Plus・6s Plus・7以降、クローズドループAFはiPhone XS以降/ページの公開日表記は2023年11月):support.apple.com
- 株式会社Kaedear 公式サイト 会社概要(社名/創業2019年1月・設立2020年10月/横浜市緑区/代表取締役 飯沢智博/事業内容:バイク用品の企画・開発・販売/社名の由来):kaedear.com
- 株式会社Kaedear 公式サイト ブランド紹介(信頼のおける工場と細部まですり合わせ製品化しております/お客様アンケートやマーケットデータを基に製品を開発):kaedear.com
確認できていないこと
- Appleのこの文書が最初に公開された日付。「2021年」は当時の報道に基づく動画での紹介で、現行ページの表記は2023年11月です
- カエディア製品の製造国・製造委託先。公式の明記は見つけられませんでした
- 「ECサイト売上1位」等のランキング実績の第三者による検証。同社の掲げる実績として扱っています
本記事のチェックポイント
- バイクの振動でiPhoneのカメラの性能が低下するおそれは、Apple公式が案内しています
- 影響を受けるのはOISとクローズドループAF。どちらも「レンズを動かして」ぶれを消す部品です
- 高出力・大排気量のバイクへの取り付けは「推奨されません」とまで書かれています
- 原付・スクーターでも防振マウントの使用が公式に推奨されています
- カエディアの公式な事業内容は「企画・開発・販売」。製造国の明記は確認できていません
- 選ぶ軸は、防振機構・自分のバイクの振動・保証とサポートです
