Elegant Gentle RiderElegant Gentle RiderMISTER CLEAN — NOTES

YouTube Mister Clean の動画を、出典つきで深掘りするノートです

振動を消すためではなかった──ブラックバードが2軸バランサーを積んだ理由

45万回見ていただいた動画の補足です。CBR1100XXは、もともと振動の少ない並列4気筒に、わざわざ2軸のバランサーを入れていました。何のためだったのか。3年で王座を明け渡した1台の設計を整理します。

「3年で抜かれたバイク」

動画では、そういう語り口で構成しました。1996年に世界最速を獲り、1999年に隼へ譲る。わずか3年です。

ここで補足したいのは、このバイクが何を狙って作られたのかです。

調べていて、いちばん意外だったのがこれでした。振動の少ない並列4気筒に、わざわざ2軸のバランサーを入れている。しかも、振動を消すためではありませんでした。

まず、諸元から

開発の狙いは、記録にはっきり書かれています。

世界最速モデルの座を目指して開発したCBR1100XX

迷いのない目標設定です。 そして当時の状況はこうでした。

当時のライバルは300km/hを豪語したZZR1100、後にGSX1300RハヤブサにニンジャZX-12Rとフラッグシップが居並ぶ世界

最速争いが、メーカーの威信をかけた戦場だった時代の1台だといえます。

2軸バランサーの、本当の理由

ここが本題です。

そもそもバランサーとは、エンジンの振動を打ち消すための重りです。単気筒や二気筒のように振動が大きいエンジンに入れるのが普通で、並列4気筒はもともと振動が少ないため、必須ではありません。

ところがCBR1100XXは、2軸を積んでいます。理由が、こう書かれています。

2軸のバランサー。振動の少ない4気筒に、スムーズさだけでなくダイナミックさを加味するため、敢えてふたつのバランサーを駆動している

「ダイナミックさを加味するため」。

振動を消すためではありません。消えすぎた振動を、意図した形に作り直すためという説明になります。

これは、かなり踏み込んだ設計思想です

振動をゼロに近づけるのは、技術的には「正解」に見えます。 ですが、まったく振動のないエンジンは、何が起きているか手に伝わってきません。

いま何回転で、どれだけ負荷がかかっていて、路面をどう捉えているか。 私たちはそれを、かなりの部分、振動から読み取っています。

300km/hを目指すバイクだからこそ、無感覚では困るという判断があったのだと読めます。

空力の話

もうひとつ、外せない要素です。

フォルムはひたすら空力を求め

300km/hという速度域では、空気抵抗が支配的になります。

抵抗は、おおむね速度の2乗に比例して増えます。速度を2倍にすれば抵抗は4倍。それを押しのけるために必要な力は、さらに速度をかけた分——つまり速度の3乗に近い勢いで増えていきます。

200km/hから300km/hへの100km/hは、100km/hから200km/hへの100km/hとは、まるで別物。 出力だけでは届きません。

CBR1100XXのあの丸みは、当時のホンダが空気に対して出した答えそのものだといえます。

3年で終わったのか

1999年、隼が登場します。

ただ、「負けた」という話にしてしまうと、見落とすものがあると思います。

CBR1100XXは2006年頃まで販売されました。最速の座を降りたあとも、10年近く売られ続けているわけです。

最速を狙って作られた車体は、最速でなくなっても、高速域で余裕のあるツアラーとして通用しました。300km/hのために作った空力と車体剛性は、150km/hで走っているときにこそ効いてくるからです。

王座は3年。商品としては10年。 どちらがこのバイクの実像かは、見る人によって変わるのではないでしょうか。

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出典

引用元

  • RIDE HI「スーパーブラックバードCBR1100XXにみるホンダの孤高なるフラッグシップ定義!」(1996年誕生/米空軍SR71の別名にあやかった命名/世界最速モデルの座を目指して開発300km/hを実現新開発の1,137cc水冷DOHC16バルブ4気筒から163ps2軸のバランサー。振動の少ない4気筒に、スムーズさだけでなくダイナミックさを加味するため、敢えてふたつのバランサーを駆動している/フォルムはひたすら空力を求め/当時のライバルはZZR1100、後にGSX1300RハヤブサとニンジャZX-12R):ride-hi.com

確認できていないこと

  • ホンダ公式によるCBR1100XXの技術解説ページ。メーカー自身の資料は確認できませんでした
  • 販売終了年の正確な時期。「2006年頃」は一般に流通している情報で、公式資料での裏付けは取れていません
  • キャブレター仕様からインジェクション仕様への変更年

本記事のチェックポイント

  • 1996年誕生。1,137cc・163ps・300km/hを実現
  • 2軸バランサーは振動を消すためではなく、「ダイナミックさを加味するため」
  • 振動をゼロにしないという判断。手に情報を残すための設計です
  • 300km/h域では空気抵抗が支配的。あの丸みは空力の答えです
  • 最速の座は3年。ただし商品としては10年近く売られ続けました

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