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バイクの技術と歴史を、一次情報にあたって確かめる記事を書いています

フレームが割れる条件を、スズキ自身が書いていた──GSX-R1000のリコール

GSX-R1000のフレームの亀裂について、米国スズキがディーラーへ出した整備通達の原文を確認しました。どういう乗り方で、フレームのどこが割れるのか。「通常の運転では」どうなのか。メーカー自身の記述と、自分の車両の未処置リコールを調べる公式の方法をまとめます。

「走行中に車体が折れる」

穏やかではない話です。スズキGSX-R1000にまつわる、フレームのリコールの噂です。

この噂には、裏付けとなる一次資料がありました。 どういう乗り方で、フレームのどこが割れるのか。スズキ自身が文書に書いています。そのうえで、この話を聞いた方がいちばん知りたいであろうこと——自分のバイクは大丈夫なのか——に答えます。

フレームの件、一次資料が見つかりました

この記事は当初、「フレームのリコールの原文にたどり着けなかった」という報告として公開しました。 その後、米国スズキ(Suzuki Motor of America)がディーラー向けに出した整備通達が、NHTSA(米運輸省道路交通安全局)のサイトで公開されているのを確認できたため、内容を差し替えます。

スズキ自身が書いている「なぜ起きるのか」

原文を引用します。

Suzuki has received reports of cracking or breakage of the motorcycle frame in certain extreme situations where unusually high stress is placed on the frame, such as collisions involving the front wheel/fork assembly.

(前輪・フォーク周りをぶつけるなど、フレームに異常に高い力がかかる極端な状況で、フレームの亀裂・破損の報告を受けている)

Suzuki has also received reports of cracking or breakage of the frame behind and below the steering neck when the motorcycle is subjected to repeated hard landings from hazardous maneuvers such as extreme or extended wheelies or other stunts.

(極端な、あるいは長く続けるウイリーやその他のスタントのような危険な操作による繰り返しの激しい着地を受けた場合に、ステアリングネックの後方かつ下方でフレームの亀裂・破損の報告を受けている)

動画のコメント欄で複数いただいた「ウィリーを繰り返す使われ方によるもの」というご指摘は、スズキ自身の文書に書かれていました。 記事の初版では「裏の取れていない情報」として扱っていましたが、訂正します。ご指摘の通りでした。

そして、その直後にこう続きます。

While ordinary operation of the motorcycle does not create a risk of cracking or breakage of the frame, Suzuki has decided voluntarily to conduct this Safety Recall to minimize the potential for frame cracking or breakage in the circumstances described above.

(通常の運転ではフレームの亀裂・破損のリスクは生じないが、スズキは上記の状況での可能性を最小限にするため、自主的にこのセーフティリコールを実施することにした)

「普通に走っていたら問題ないのか」という質問にも、メーカー自身が答えていたことになります。

なお同じ文書で、スズキはこの種の運転について「無謀であり、公道で行えば違法」(reckless - and illegal when performed on a public roadway)とし、容認しないと明記しています。

何をしたのか

大事な限定条件:これは米国向けの文書です

上記は米国スズキが、アメリカのディーラーに宛てた整備通達です。 対象車のVIN(車体番号)レンジも、北米向けの範囲が示されています。

日本国内で同じ措置が取られたかどうかは、この記事では確認できていません。 国土交通省のリコール届出一覧で確認できたGSX-R1000の届出は、下記の2018年・燃料装置の件でした。 国内の車両については、次章の窓口と販売店で確認してください。

国内で確認できたのは、別件でした

これはフレームの件ではありません。 燃料まわりの届出です。

つまり、フレームの話は米国の資料で確認でき、国内の届出としては確認できていない——現時点で言えるのは、ここまでです。

その代わりに、確実に役立つことを

「あの車種は危ないらしい」という話を聞いて、本当に不安になるのは自分のバイクのことではないでしょうか。

それは、調べられます。

国土交通省が運営している「自動車不具合情報ホットライン」というサイトがあり、次の機能が公開されています。

二輪車も対象です。 中古で買ったバイクや、譲り受けたバイクは、前の所有者の時代に届いた通知が処置されないまま残っていることがあります。

窓口はこちらです。

自動車不具合情報ホットライン renrakuda.mlit.go.jp 電話:0120-744-960(フリーダイヤル)

中古で買った方は、特に確認を

リコールの通知は、登録されている所有者宛に郵送されます。

ということは、こうなります。

リコールの処置は、無償です。 そして期限もありません。 何年前の届出であっても、未処置であれば無料で受けられます。

「古いバイクだから、もう対象外だろう」と思って確認しない方が多いのですが、そこが落とし穴です。

中古車にリコール通知が届かない仕組みの図。通知は登録上の所有者宛に郵送されるため、処置しないまま売却されると現在の所有者には届かない。国土交通省の窓口で自分で調べられ、処置は無償・期限なし
通知が来ないことと、対象でないことは別の話です。切れた線の先を、自分でつなぎ直せます

不具合を見つけたら、報告できます

もうひとつ、知っておいて損のない仕組みがあります。

同じ窓口で、不具合情報の申告を受け付けています。電話とWEBフォームの両方が用意されています。

リコールは、突然決まるものではありません。 メーカーが自ら見つける場合もありますが、ユーザーからの申告が積み上がって表面化することも少なくありません。

「自分のだけかもしれない」と思っていた不具合が、同じ車種で何件も報告されていれば、話が変わってきます。 先ほどの届出も、不具合の件数はわずか1件でした。1件でも届出に至ることがあるわけです。

用語の整理

紛らわしいので、簡単に整理しておきます。

内容
リコール保安基準に適合しなくなるおそれがある場合。国土交通大臣への届出が必要
改善対策保安基準不適合ではないが、安全上・環境上の支障がある場合
サービスキャンペーン上記に当たらないが、商品性の観点からメーカーが自主的に行うもの

「リコールじゃないから安心」ではありません。 改善対策やサービスキャンペーンでも、無償で直してもらえます。対象になっているなら、受けたほうが得です。

コメント欄から

この動画には140件を超えるコメントをいただきました。いくつか拾います。

視聴者コメント

※割れるのはウィリーを繰り返すアメリカ人によるものです

同じ趣旨のコメントを複数いただきました。このご指摘は、正しかったです。 記事の初版では「裏の取れていない情報」として扱っていましたが、その後に確認できたスズキ自身の整備通達に、極端な、あるいは長く続けるウイリーやその他のスタントによる、繰り返しの激しい着地が、ステアリングネック後方下部の亀裂の要因として明記されていました。訂正してお詫びします。ご指摘がなければ、この資料を探しにいっていませんでした。

視聴者コメント

逆にスタント走行しないで普通に走ってたら問題ないのかな?

この疑問にも、メーカー自身が答えていました。 スズキの整備通達は「通常の運転ではフレームの亀裂・破損のリスクは生じない」と明記したうえで、それでも自主的にリコールを実施する、という書き方をしています。

ただし、これは「点検しなくてよい」という意味ではありません。中古で買った車両が、前の所有者にどう扱われたかは分かりません。 補強ブレースが既に付いているかどうかは外から見て判断できる部分でもあるので、該当年式(2005・2006年式)を所有されている方は、販売店で点検の履歴を確認するのが確実です。

視聴者コメント

ヘタったらフレーム交換してくれるなんてリコールじゃなくて最高のサービスじゃね?

見方としては、実は的を射ていると思います。「リコール=恥」のように語られがちですが、制度としてのリコールは、メーカーが費用を全額持って恒久対策をする仕組みです。いちばん上のコメントも「リコールして直せるのが凄い」でした。放置されるより、届け出て直されるほうがユーザーにとっては確実に得です。だからこそ、未処置のまま中古市場を流れている個体だけが本当の問題になります。

この記事の結論

動画で扱った話を一次資料で裏付けるはずが、裏が取れなかったという報告になりました。

ただ、「あの車種が危ない」という情報より、自分のバイクを自分で調べられるという事実のほうが、実際に役に立つのではないかと思います。5分で終わります。

出典

引用元

  • 国土交通省「報道発表資料:リコールの届出について(スズキ GSX-R1000 他)」および添付のリコール届出一覧表(届出日 平成30年10月23日/届出番号 外-2739/GSX-R1000〈DM11A〉・GSX-R1000R〈DM11G〉計980台/不具合の部位 燃料装置〈Oリング〉/燃料ポンプ組付時にOリングがねじれ、最悪の場合燃料が漏れるおそれ/不具合の件数1件・事故の有無なし):mlit.go.jp
  • 米国スズキ(Suzuki Motor of America)ディーラー向け整備通達「GS/GSX/GSX-R BULLETIN NO. 192」(2009年1月15日/VOLUNTARY SAFETY RECALL CAMPAIGN #2A08/対象 2005 AND 2006 GSX-R1000 MOTORCYCLES/FRAME REINFORCEMENT BRACE INSTALLATION/FRAME REPLACEMENT/cracking or breakage of the frame behind and below the steering neck when the motorcycle is subjected to repeated hard landings from hazardous maneuvers such as extreme or extended wheelies or other stunts/While ordinary operation of the motorcycle does not create a risk of cracking or breakage of the frame/reckless - and illegal when performed on a public roadway/補強ブレースはアルミ製・2ポンド未満・ボルトとエポキシ接着剤で装着/亀裂発見時はフレーム交換/装着日から5年保証/過去の自費交換への払い戻し制度):NHTSA掲載PDF static.nhtsa.gov
  • 国土交通省「自動車不具合情報ホットライン」(リコール情報検索/リコール届出情報一覧/不具合情報検索/事故・火災情報検索/電話およびWEBでの不具合情報の申告/フリーダイヤル0120-744-960):renrakuda.mlit.go.jp

確認できていないこと

  • 日本国内での同等の措置の有無。 上記の整備通達は米国スズキが米国ディーラーに宛てたもので、対象VINも北米向けの範囲です。国内での届出・対象台数は、国土交通省の届出一覧では確認できていません
  • 米国キャンペーン#2A08の対象台数。今回確認したPDFにはVINレンジの記載はありますが、総台数の記載を確認できていません
  • 並行輸入車の扱い。 北米向けVINの車両が国内にある場合の処置窓口は、販売店へご確認ください

注記

  • リコール/改善対策/サービスキャンペーンの区分についての表は、制度の一般的な説明に基づくものです

本記事のチェックポイント

  • フレームのリコールは、一次情報で裏が取れませんでした。 具体的な内容は書いていません
  • 確認できたのは2018年の燃料装置(Oリング)の届出、計980台。別件です
  • 自分のバイクのリコールは、国土交通省の窓口で自分で調べられます
  • 中古車は要注意。 前の所有者に届いた通知が未処置のまま残っていることがあります
  • 処置は無償で、期限もありません
  • 不具合の申告もできます。 届出の端緒は、件数1件のこともあります

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