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YouTube Mister Clean の動画を、出典つきで深掘りするノートです

NM4の年間販売計画は2,000台から1,000台へ──Hondaのリリースで追えること、追えないこと

30万回見ていただいた動画の補足です。Hondaのニュースリリースに載った年間販売計画台数(実売ではありません)を並べると、2,000台→1,150台→1,000台という線が引けます。映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の劇中車が「NM4そのもの」ではなかったことも、Honda公式の発表文から確認しました。

「これ、実車を一度しか見たことがない」──NM4の話をすると、必ずこの手のコメントが付きます。

動画では「売れなかったけどハリウッド版『攻殻機動隊』に出演した」という切り口で紹介しました。この「売れなかった」は、感覚で言った部分です。車種別の販売実績は公表されていないので、本当は言い切れません。

ただ、Hondaのニュースリリースには毎回年間販売計画台数が書かれています。NM4に関するリリースを発売順に並べると、シリーズ合計で 2,000台 → 1,150台 → 1,000台(NM4-01が単独だった最初のリリースでは1,200台)。

計画台数は実売ではありません。 リリースには理由も書かれていないので、なぜ下がったのかも分かりません。分かるのは「翌年時点の計画台数が下がった」ということだけです。 そしてもう一つ、映画に出たあの車両は「NM4そのもの」ではありませんでした。こちらもHonda公式の発表文に書かれています。順に見ていきます。

ホンダのリリースに載った数字を並べる

NM4シリーズの発売・変更について、Hondaは4本のニュースリリースを出しています。そこに書かれた年間販売計画台数(いずれも国内)を、日付順に並べます。

発表内容年間販売計画台数
2014年4月10日NM4-01 発売(4月21日)1,200台(NM4-01のみ)
2014年5月30日NM4-02 発売(6月10日)2,000台(01・02 合計)
2015年2月27日カラーオーダープラン追加(3月2日発売)1,150台(シリーズ合計)
2016年2月29日一部熟成(3月11日発売)1,000台(シリーズ合計)

2機種そろった時点での2,000台が、翌年には1,150台。4割以上減っています。 さらに翌年で1,000台。

ホンダのニュースリリースに記載されたNM4の年間販売計画台数の推移を示す棒グラフ。2014年5月のNM4-02発売時はNM4-01と02の合計で2000台、2015年2月のカラーオーダープラン追加時はシリーズ合計1150台、2016年2月の一部熟成時はシリーズ合計1000台。数字は販売計画であって実売台数ではない
ホンダのニュースリリース3本に書かれた年間販売計画台数。実売ではなく、メーカーが立てた計画の数字です

くり返しますが、これは計画であって実績ではありません。 増産が難しくて絞ったのか、需要を見直したのか、販売期間の設定なのか、リリースには理由が書かれていないので分かりません。それでも、翌年時点の計画台数が4割以上下がったという事実は、公開情報として残っています。

中身は、まぎれもなく「あのNC」だった

見た目の話が先行しがちですが、NM4の中身は、当時ホンダが力を入れていた実用エンジンそのものです。

ホンダの発表資料に載っている主要諸元は、こうなっています。

6,250rpmで最高出力という数字を見てください。同じ745cm³のNC750シリーズについて、Hondaは低・中回転域で力強いトルク特性と説明しています。開発テーマは「近未来」と「COOL」。見た目は未来、エンジンは実用側という組み合わせだったことになります。

コメント欄にも、まさにこの点を突いた指摘がありました。

視聴者コメント

まあ、中味はNCだし、みんなそれは知っていた。NCなのにわざわざスクーター乗るかなあって

この「エンジンはNCと共通」という部分は、Hondaの発表資料の型式名で確認できます。 NM4の3か月前、2014年1月に発表された「NC750X」「NC750S」「インテグラ」の主要諸元にも、エンジン型式・種類:RC70E・水冷 4ストローク OHC 4バルブ 直列2気筒/総排気量745cm³/最高出力40[54]/6,250 と、まったく同じ行が並んでいます。同系ではなく、同じ型式のエンジンです(車体やフレーム型式は別で、共通なのはエンジンの型式と主要数値です)。 そしてこれは、NM4の弱点ではなく、後で効いてくる伏線でした(最後の章で触れます)。

NM4-01とNM4-02は、リア形状と収納と装備が大きく違う

同じ名前で2種類あることは、意外と知られていないかもしれません。Hondaの発表資料から拾うと、差はここに出ます(エンジン・シート高・燃料タンクなどは共通です)。

NM4-01NM4-02
発売日2014年4月21日2014年6月10日
価格(消費税8%込み)999,000円1,161,000円
リアテールカウルを絞り込むリア回りにもボリューム感
収納左 約1L + 右 約3L左右それぞれ約7.5L
標準装備ETC車載器・グリップヒーター(5段階)
車両重量245kg255kg

収納が合計4Lから15Lへ。 3倍以上です。ETC車載器とグリップヒーターまで標準で付いて、差額は162,000円。

コメント欄には、こういう声もありました。

視聴者コメント

これシートの後ろに収納つけて背もたれを浮かさないデザインにすりゃ良かったんだよ

それに近い仕様が、最初から用意されていました。 それがNM4-02です。リア回りにボリュームを持たせて、左右約7.5Lずつの収納を確保している。NM4は世界初公開の時点で2タイプ構成として発表されており、02は後から急いで足したものではありません。発売が2か月遅れただけで、「収納と背もたれをどうするか」という問いには、最初から2つの答えが用意されていたことになります。

なお、バックレストは前後4段階・角度3段階に調節可能で、これはNM4-01の発表時点から両タイプに備わっていた機能です。シート高650mmと合わせて、足つきと背もたれで「乗る前のハードル」を下げる方向に振られた設計だったことが分かります。

映画に出たのは、NM4そのものではなかった

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい訂正です。

動画では「ハリウッド版『攻殻機動隊』に出演」と紹介しました。出演したこと自体は、ホンダ公式のニュースリリースで確認できます。 ただし、そこにはこう書かれています。

未来感のあるスタイリングでお客様にご好評をいただいている大型二輪車「NM4」をヒーローバイクのベース車両として提供

そして、

車両の他に、車両の新たなデザインスケッチについても提供

つまり、ホンダが渡したのは「NM4」と「新しく描き起こしたデザインスケッチ」の2つで、実際の撮影車両はそのスケッチをもとに映画の制作スタッフが作っています。ショールームのNM4がそのまま映っているわけではありません。

映画は北米で2017年3月31日、日本で4月7日に公開され、全世界50以上の国と地域で順次公開されています。主人公「少佐」役を演じたのはスカーレット・ヨハンソン氏です。

「NM4が映画に出た」は正しい。でも「映画に出たあのバイクを買えた」わけではない。 60秒では削ってしまった一行を、ここで足しておきます。

確認できなかったこと

  • 仮面ライダードライブの「ライドマッハー」「ライドチェイサー」のベース車がNM4であるという指摘を複数の方からいただきましたが、ホンダ・東映いずれの一次資料でも確認できませんでした。この記事では事実として扱っていません
  • NM4の生産終了時期:ホンダの2輪製品アーカイブに掲載されているのは2016年2月モデルが最後で、生産終了を告げる公式発表は見つけられませんでした
  • 車名「NM4」の由来:世界初公開のリリースにも発売リリースにも説明がありません
  • 実際の販売台数:車種別の販売実績は公表されておらず、確認できませんでした。本文の数字はすべて「計画台数」です

いま、現物で確かめられること

Hondaの2輪製品アーカイブに載っているのは2016年2月モデルが最後ですが、確かめられることは残っています。

  1. 中古車のリアまわりを見る。 テールが絞られていれば01、リアにボリュームがあって左右に大きな収納があれば02です。シートに座らなくても、後ろから見るだけで判別できます
  2. 収納を開けて手を入れる。 01は左約1L・右約3L、02は左右それぞれ約7.5L。カタログの数字が、この差として手に伝わります
  3. バックレストを動かしてみる。 前後4段階、角度3段階。動かない飾りではありません
  4. シート高650mmに跨る。 大型二輪でこの数字は相当低い部類です。「大型は足がつかない」と思っている方ほど、一度またいでみる価値があります
  5. DCTのモードを切り替える。 2016年3月の一部熟成でDCTの制御が見直され、Sモードではエンジン回転数が高めに設定されるようになりました。同じNM4でも、2016年モデルと初期型では味が違います
  6. X-ADVの諸元表と並べる。 2017年のX-ADVは型式RC88E・745cc・40kW〈54PS〉/6,250rpm。NM4と数字が一行も違いません

ホンダは、この路線を諦めていなかった

コメント欄で、いちばん核心を突いていたのがこれでした。

視聴者コメント

DN-01やインテグラやNM4とホンダはATの大型クルーザーが連続でコケてたけどX−ADVはヒットしてるしやっぱり簡単に諦めたら駄目なんだね

X-ADVについて、ホンダ公式の数字で確かめられることがあります。

2017年4月14日に発売されたX-ADVのエンジンは、水冷・4ストローク・OHC・4バルブ 直列2気筒745cc、型式RC88E。最高出力は40kW〈54PS〉/6,250rpmDCTを標準装備。

NM4は745cm³のRC70Eで40kW〈54PS〉/6,250rpm、DCT標準。排気量も、出力も、発生回転数も、変速機も一致します。 車体もフレームも足まわりもまったく別のバイクですが、動力の中核だけを取り出すと、数字が一行も違いません。

そして、その中核はそこで止まりませんでした。

排気量はそのままに、出力と発生回転数が引き上げられ、いまも現行車として発表が続いています。

違ったのは、その中身に何を着せたかです。NM4は「近未来」と「COOL」。X-ADVは「GO EVERYWHERE with EXCITEMENT」。

そして結果として、Hondaの2輪製品アーカイブでNM4が止まったのは2016年2月モデル。一方のX-ADVは、2018年の仕様装備充実、2021年のフルモデルチェンジ、2024年の一部外観変更、そして2026年1月のカラー変更まで、発表が途切れていません。 年間販売計画台数も、2017年・2018年の400台から2021年には700台へ増えています。

NM4とX-ADVの関係を示す図。745cc直列2気筒とDCT、最高出力40kW〈54PS〉/6,250rpmという同じ数字が、NM4(エンジン型式RC70E・2014年4月発売・Hondaの2輪製品アーカイブは2016年2月モデルが最後)と、2017年4月発売のX-ADV(エンジン型式RC88E)の両方に並ぶ。X-ADVは2021年3月のフルモデルチェンジで型式RH10E・43kW〈58PS〉/6,750rpmとなり、現行型は型式RH21Eで同じ出力。2026年1月にもカラー変更の発表が出ている
車体もフレームも別のバイクですが、動力の中核の数字は一致していました(Hondaのニュースリリースの記述より作図)
視聴者コメント

こういうの作れって言う割に結局買うのはz900rsみたいなバイクなんだから作らなくなるに決まってるしユーザーの言うことも聞かなくなるよね

厳しい指摘ですが、ホンダの行動を見るかぎり「作らなくなった」わけではなさそうです。 中身を保ったまま外装とコンセプトを変えて出し直し、今も続いている。諦めたのはNM4という服のほうで、その中身は生きている、という見方ができます。

視聴者コメント

ただなー こいつはバイク乗ったことない人にリーチするもんなのに大型二輪なんよなー 普通二輪で作れば良かったんよ

シート高650mm、DCTでクラッチ操作なし、最高出力は6,250rpmで発生。 装備を見るかぎり、たしかに「初めての人」を強く意識した設計です。それが大型二輪免許の向こう側にあった。この指摘に、公式資料から反論できる材料は見つかりませんでした。

どれが正解だったかを決める必要はないと思います。未来的な見た目を選ぶのか、扱いやすさを選ぶのか、それとも同じ中身が別の服を着たX-ADVを選ぶのか。 選ぶ軸は、思っているより多く残されています。

出典

引用元

  • Honda ニュースリリース「圧倒的な存在感を放つ新コンセプトモデル『NM4-01』を発売」(2014年4月10日/発売4月21日・999,000円・年間販売計画1,200台・RC70E・745cm³・40kW〈54PS〉/6,250rpm・DCT標準・シート高650mm・車両重量245kg・燃料タンク11L・バックレスト前後4段階/角度3段階・収納 左約1L/右約3L):global.honda
  • Honda ニュースリリース「迫力あるスタイリングの大型二輪車『NM4』の第2弾『NM4-02』を発売」(2014年5月30日/発売6月10日・1,161,000円・年間販売計画 NM4-01/02合計2,000台・収納 左右それぞれ約7.5L・ETC車載器・グリップヒーター5段階・車両重量255kg・最大トルク68N·m/4,750rpm):global.honda
  • Honda ニュースリリース「迫力あるスタイリングの大型二輪車『NM4』シリーズにカラーオーダープランを追加し発売」(2015年2月27日/発売3月2日・年間販売計画 シリーズ合計1,150台・11色):global.honda
  • Honda ニュースリリース「個性的なスタイリングの大型二輪車『NM4』シリーズの一部を熟成し発売」(2016年2月29日/発売3月11日・年間販売計画 シリーズ合計1,000台・DCTをよりスポーティーな制御に進化/Sモードで回転数を高く設定):global.honda
  • Honda ニュースリリース「新コンセプトモデル『NM4』を世界初公開」(2014年3月21日/第30回大阪モーターサイクルショー2014・開発テーマ「近未来」と「COOL」):global.honda
  • Honda ニュースリリース(映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』/2017年3月17日・「NM4」をヒーローバイクのベース車両として提供車両の新たなデザインスケッチについても提供・北米3月31日/日本4月7日公開):global.honda
  • Honda ニュースリリース「新型アドベンチャーモデル『X-ADV』を発売」(2017年4月13日/発売4月14日・RC88E・745cc・40kW〈54PS〉/6,250rpm・DCT標準・年間販売計画400台):global.honda
  • Honda ニュースリリース「大型アドベンチャーモデル『X-ADV』の仕様装備を充実し発売」(2018年4月19日/発売4月20日・RC88E・745cm³・40kW〈54PS〉/6,250rpm・年間販売計画400台):global.honda
  • Honda ニュースリリース「大型クロスオーバーモデル『X-ADV』をフルモデルチェンジし発売」(2021年3月5日/発売3月25日・RH10E・745cm³・43kW〈58PS〉/6,750rpm・年間販売計画700台・開発コンセプト「スマート&エキサイティング ADVENTURE URBAN TRANSPORTER」):global.honda
  • Honda ニュースリリース「大型クロスオーバーモデル『X-ADV』の一部外観変更と装備充実を行い発売」(2024年12月5日/発売12月12日・RH21E・745cm³・43kW〈58PS〉/6,750rpm・DCT制御をアップデート):global.honda
  • Honda ニュースリリース「大型スポーツモデル『NC750X』『NC750S』『インテグラ』を発売」(2014年1月14日/エンジン型式・種類 RC70E・水冷 4ストローク OHC 4バルブ 直列2気筒/総排気量745cm³/最高出力40[54]/6,250):global.honda
  • Honda ニュースリリース(X-ADVのカラーリング変更/2026年1月30日・発売3月5日・RH21E・745cm³・43kW〈58PS〉/6,750rpm):global.honda
  • Honda 2輪製品アーカイブ「NM4」(掲載は2016年2月モデルが最後):global.honda

確認できていないこと

  • 実際の販売台数(車種別の販売実績は公表されておらず、確認できませんでした)。本文の数字はすべて年間販売計画台数です
  • NM4の生産終了時期の公式発表
  • 車名「NM4」の由来
  • 仮面ライダードライブの劇中車のベース車両がNM4であること(一次資料で確認できませんでした)

注記

  • 価格はいずれも当時の消費税8%込みの価格です。現在の税率とは異なります

本記事のチェックポイント

  • Hondaのリリースに載った年間販売計画台数は2,000台→1,150台→1,000台(実売ではなく計画です)
  • エンジンは745cm³のRC70E・40kW〈54PS〉/6,250rpm・DCT標準。NC750シリーズと同じ型式です
  • NM4-01と02は収納が合計約4Lと約15L、ETC・グリップヒーターの有無で大きく違います
  • 映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の劇中車は、Honda公式によればNM4と新規デザインスケッチをもとに映画側が製作したものです
  • 2017年発売時点のX-ADVは、745cc・40kW/6,250rpm・DCTという主要数値がNM4と一致。現行型はRH21E・43kW〈58PS〉/6,750rpmへ更新され、発表が続いています

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