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バイクの技術と歴史を、一次情報にあたって確かめる記事を書いています

249.42ccを6気筒に割る──ホンダRC166が選んだ回転数

250ccを6気筒にしたRC166は、18,000rpmで60PS以上を出していました。なぜそこまで回す必要があったのか、ホンダ公式の諸元と当時のレース事情から整理します。

「250ccで6気筒」

数字だけ聞くと、意味が入ってこないかもしれません。1気筒あたり約41ccです。原付の半分以下の容積を、6つ並べている。

この記事では、なぜそうする必要があったのかを、資料で確かめます。

ホンダ公式に残る諸元は、こうなっています。

順番に見ていきましょう。

相手は2ストロークだった

まず、当時の状況です。ホンダ公式の説明にこうあります。

2ストロークマシンが主流となる中、それでも4ストロークにこだわったHondaは、エンジンのさらなる高回転化でその波に抗おうと奮闘

ここが出発点です。

2ストロークは、クランクが1回転するごとに1回燃焼します。4ストロークは2回転で1回。同じ排気量・同じ回転数なら、2ストロークは倍の回数だけ爆発しているわけです。

4ストロークが同じ土俵で戦うには、回転数を上げるしかない。 燃焼の回数で負けているなら、回す速さで取り返す。理屈としてはそれだけです。

そこで「6気筒」になる

では、なぜ気筒を増やすと回せるのか。

エンジンの回転数を上げると、ピストンが上下する速度が上がります。この速度が高すぎると、部品が保ちません。ここに上限があります。

ところが、同じ排気量を細かく割ると、1つあたりのピストンの移動距離(ストローク)が短くできる。 移動距離が短ければ、同じ回転数でもピストンの速度は低く済むわけです。

250ccを6つに割る=1気筒41cc=ストロークを極端に短くできる=18,000rpmまで回せる。

「6気筒にしたら速くなった」のではありません。18,000rpm回すために、6気筒でなければならなかった。 順番が逆です。

RC166が6気筒を選んだ理由の流れ図。2ストロークは倍の回数燃焼するため、4ストロークは回転数で取り返すしかない。しかしピストン速度に上限があるため、250ccを6つに割ってストロークを短くし、18,000rpmを成立させた
出発点は「燃焼の回数で負けている」こと。6気筒は、その連鎖の終着点です

この記事で確かめた範囲

60秒の動画では、構造の異常さまでしか触れられませんでした。 この記事では、そうする必要があった理由を、ホンダ公式の記述から確かめています。

7段変速と、2.36kgm

諸元の中で見落とされがちなのが、トルクの数値です。

2.36kgm。 現代の250ccが20〜24N・m(およそ2.0〜2.4kgm)程度であることを考えると、数字としては大きくありません。

つまりRC166は、トルクで押すエンジンではない。 60PSという出力は、小さな力を、とにかく高い回転数で稼ぐことで成立しています。

だからこそ、7段変速が必要になります。

力の出る回転域が狭いエンジンは、そこから外れると一気に遅くなる。 ギアの段数を増やして、常に美味しい回転数に留め続けるしかありません。7段という数字は、そのエンジンの狭さの裏返しだといえます。

そして車重は112kg。現代の原付二種より軽い車体に、このエンジンが載っていたことになります。

1966年に何が起きたか

戦績も公式に記録されています。

1966年シーズンで、マイク・ヘイルウッド選手が出場した10戦すべてで優勝。1967年も2年連続でチャンピオンを獲得

出た全部で勝っています。

2ストロークの時代が来ることは、当時すでに見えていました。それが分かっていて、なお4ストロークで、しかも6気筒で、正面から勝ちにいった。

RC166が語り継がれているのは、エンジンが凄いからというだけではないと思います。引き際が見えている勝負に、全力で答えを出したという部分が、いまも人を惹きつけているのではないでしょうか。

コメント欄から

この動画には230件を超えるコメントをいただきました。そして上位は、ほぼ全部が同じ話題です。

視聴者コメント

自分たちが太刀打ちできないとレギュレーション変えるいつものお約束

「ゴールポストを動かすのは欧州文化のお家芸」「当時から変わらない日本人排除」——同じ趣旨のコメントが、いいね数百件の規模で並びました。動画のオチがこの部分だったこともあり、コメント欄でいちばん感情が動いたのはエンジンではなくルールの話でした。

事実関係を整理しておきます。多気筒・多段変速がその後のレギュレーションで制限されたこと自体は広く知られていますが、この記事では規則改定の一次資料(正確な年・条文)にまだ到達できていません。 コメント欄には「500は4気筒・変速機は6速まで、250・350は2気筒、125以下は単気筒となった」という具体的な証言もいただいており、裏が取れ次第、本文に追記します。

もうひとつ、別の見方も載せておきます。

視聴者コメント

これについてはホンダがやり過ぎたと思います。50から500ccまでの6クラス全てのメーカータイトルを獲ってしまったから他メーカーがやる気を無くしてしまいました。

「排除された」ではなく「勝ちすぎて競技が成立しなくなった」という解釈です。 どちらの見方を取るかで、同じルール変更がまったく違う物語になります。両方あることを、ここに残しておきます。

視聴者コメント

6気筒だと重くなり過ぎて早いの?と思ってしまうけど、早いと言うのは流石ホンダだと思う

もっともな疑問です。答えは諸元にあります。車重112kg——現代の原付二種より軽い。 6気筒で部品は増えても、車体全体をそこまで軽く作り切ったことで成立しています。そして「リッターあたり248馬力?」という換算のコメントもありましたが、公式表記は「over 60PS」なので、リッター換算で240PS以上というところまでが確かめられる範囲です。

出典

引用元

  • Honda公式「Honda World Grand Prix 800勝の軌跡」RC166(249.42cc/4サイクル並列6気筒DOHC4バルブ・空冷/over 60PS・18,000rpm/2.36kgm・17,000rpm/7段変速/112kg/2ストロークが主流となる中、4ストロークにこだわり高回転化で対抗/1966年に出場10戦すべて優勝、1967年も連続チャンピオン):honda.co.jp

注記

  • ストロークを短くすると高回転化しやすいという説明は、内燃機関の一般的な原理に基づく解説です。RC166のボア・ストローク値そのものは、公式資料で確認できていません。

本記事のチェックポイント

  • 249.42ccを6気筒。 1気筒あたり約41cc
  • over 60PS/18,000rpm。 車重は112kg
  • 6気筒にしたのは、18,000rpm回すためにストロークを短くする必要があったから
  • 最大トルクは2.36kgm。力ではなく回転数で出力を作っています
  • 7段変速は、力の出る回転域が狭いことの裏返し
  • 1966年、出場10戦すべてで優勝

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