新品タイヤを削ってはいけない──メーカーは「絶対に避けてください」と書いている
99万回見ていただいた動画の補足です。新品タイヤの表面をクレンザーやヤスリで処理する方法が語られることがありますが、ミシュランは公式に「絶対に避けてください」と明記しています。ブリヂストンとミシュランの公式記述から、正しい慣らしの内容を整理します。
「新品タイヤは滑るから、最初に表面を落としておけ」
一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。クレンザーで洗う、ヤスリをかける、パーツクリーナーで拭く。ベテランほど、この手の話を持っているものです。
結論から書きます。タイヤメーカーは、これをはっきり否定しています。
ミシュランの公式ページには、こう書かれています。
研磨剤等を使用してタイヤの表面を磨いたりこすったりすることは絶対に避けてください。
「非推奨」ではなく「絶対に避けてください」です。ここまで強い言い方をメーカーがするのは、それなりの理由があるということになります。順番に見ていきましょう。
そもそも、新品タイヤの表面には何があるのか
ミシュランの公式説明では、こうなっています。
離型剤を使用することで、タイヤ表面に光沢のある薄い膜が残ることがあります。
離型剤というのは、タイヤを金型(モールド)から取り出すときに使う薬剤です。膜が残ることがある、というのは事実。 ここまでは、よく言われている話と一致します。
問題はその先、「だから削り落とせばいい」という飛躍のほうです。
削ってはいけない理由
タイヤの表面は、単なるゴムの塊ではありません。
- トレッドのゴムは、意図した配合と表面状態で性能が出るように作られている
- 研磨剤でこすれば、本来のゴムまで一緒に傷める
- 溶剤で拭けば、ゴムの成分に影響が出る可能性がある
- そして何より、削った直後に「もう大丈夫」と思い込んで走り出すことが危ない
最後の点が、実はいちばん怖いところではないでしょうか。表面を落としたつもりになって、いきなり普段どおりのペースで走る。 これは慣らしをしないより悪い状態になり得ます。
「100km」という数字の中身
では、実際には何をすればいいのか。両社とも数字を出しています。
ブリヂストン公式
新しいタイヤの特性に慣れるために、初めの100㎞は注意して、無理な運転をしないでください
避けるべき動作として、急制動・急発進・無理なコーナリングが挙げられています。
ミシュラン公式
少なくとも100km前後の慣らし運転を行ってください。これはすべてのモーターサイクルタイヤに該当します
こちらも、急発進・急加速・急旋回・急停止を避け、徐々にタイヤへの要求を高めてくださいとしています。
両社とも100km前後で一致している、というのは押さえておいてよい数字だといえます。
ここが、いちばん見落とされている点
注意深く読むと、ブリヂストンの説明には離型剤の話が出てきません。
慣らしの理由として書かれているのは、こちらです。
新しいタイヤの特性に慣れるために
つまり、落とすべきは表面の膜ではなく、乗り手側の「前のタイヤの感覚」のほうだという説明になっています。
タイヤは銘柄ごとに、断面の形も、グリップの立ち上がり方も、倒し込んだときの感触も違います。同じ車体でも、タイヤが変われば別物です。その差に体を慣らす時間が100kmだ、という話であれば、削って短縮できるものではありません。
やってはいけないこと
- 研磨剤(クレンザー・ヤスリなど)で表面をこする → ミシュラン公式が「絶対に避けてください」と明記
- 溶剤で拭いて済ませる → 膜が落ちても、乗り手の慣れは進みません
- 削ったから大丈夫だと思って、いきなり普段のペースで走る → いちばん危ないのはここです
実際にやること
やることは、拍子抜けするほど単純です。
- 最初の100kmは、急がつく操作をしない。 急制動・急発進・急旋回・急停止
- バンク角を少しずつ増やしていく。 端まで一気に使わない
- 雨の日と、寒い朝はさらに慎重に。 温度が上がりきらないうちが危ない
- 空気圧を確認する。 交換直後こそ、指定値どおりか見ておく
最後の空気圧について、ひとつ補足します。
新品タイヤは、慣らし以前に空気圧で滑ります。 交換した店で規定値に合わせてもらっていても、走り出せば温度が変わり、数日置けば自然に抜けます。そして、抜けたことは見ただけでは分かりません。
ガソリンスタンドの備え付けを借りる方法もありますが、自宅で走り出す前に測れるのとでは、確認の回数がまるで違ってきます。
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この記事の立ち位置
動画は60秒の尺の都合で、結論に絞って構成しています。 ここでは、タイヤメーカー2社の公式記述から、確認できた範囲を補足しています。
新品タイヤが滑りやすいのは本当です。ただし、滑る理由は膜だけではなく、慣れていないことのほうが大きい。 そう考えると、100kmという数字の意味も、削ってはいけない理由も、すっと入ってくるのではないでしょうか。
出典
引用元
- ブリヂストン公式「新しいタイヤに交換した時、タイヤの慣らし走行は必要ですか?」(初めの100kmは注意/急制動・急発進・無理なコーナリングを避ける/新しいタイヤの特性に慣れるため):bridgestone.co.jp
- 日本ミシュランタイヤ公式「新品タイヤの慣らし」(離型剤による光沢のある薄い膜/研磨剤等での研磨・こすりは絶対に避ける/少なくとも100km前後/徐々にタイヤへの要求を高める):michelin.co.jp
注記
- 銘柄や使用条件によって推奨が異なる場合があります。お使いのタイヤの説明書とメーカーの案内を優先してください。
本記事のチェックポイント
- ミシュラン公式は研磨剤等での研磨・こすりを「絶対に避けてください」と明記しています
- 離型剤の膜が残ること自体はメーカーも認めている
- ブリヂストンが慣らしの理由に挙げているのは新しいタイヤの特性に慣れるためです
- 距離は両社とも100km前後で一致
- 削っても、乗り手の慣れは進みません
