Elegant Gentle RiderElegant Gentle RiderMISTER CLEAN — NOTES

バイクの技術と歴史を、一次情報にあたって確かめる記事を書いています

バーエンドウェイトは振動を消していない──メーカーがそう書いている

ハンドルの端に付ける重り。あれが何をしているのか、メーカー自身が「振動自体は無くなっていない」と説明しています。仕組みと、買う前に測っておくべき寸法をまとめます。

「ハンドルに付いてる、あの棒。ただの飾りじゃない?」

ハンドルの左右をつなぐ一本の棒——ハンドルブレース——は、じつは振動対策のパーツでもあります。同じ題材を動画でも扱ったのですが、いちばん多かった反応は「スマホを着けるクランプバーだと思ってた」でした。

そして、こんな指摘もいただきました。

視聴者コメント

それよりも振動に効果的なパーツがありますよ。グリップエンドと言うのですが····ラバーマウントで免震機能を持ったものはマジで振動が減ります。

この記事では、この指摘に乗って、ハンドルの振動対策パーツが実際に何をしているのかを掘り下げます。しかも、なかなか身も蓋もない話になります。

メーカーの製品説明に、こう書かれています。

これまでのウエイトタイプのバーエンドは、微振動を大きな振れに変換することで振動を緩和。振動自体は無くなっていない。

振動は消えていない。 手に伝わる形を変えているだけだ、と作っている側が書いているわけです。順番に見ていきましょう。

ハンドルバーの端に取り付けられた円筒形の金属製バーエンドウェイトのクローズアップ
ハンドルの端の、この重り。飾りに見えますが、振動の「出方」を変える部品です

作図:Mister Clean NOTES(生成AIによる作例。特定メーカーの製品ではありません)

なぜ手が痺れるのか

まず前提から。

エンジンや路面からの振動がハンドルに伝わり不快感、疲労へとつながる。

エンジンは、内部で爆発を繰り返しています。滑らかに回っているように見えて、細かく震え続けている。 それが車体を通ってハンドルに届き、最後にグリップから手のひらに入ってきます。

そして厄介なのは、振動には周波数があるということです。

同じエネルギーでも、どちらの形で手に来るかで、疲れ方がまったく違う。 ここが今回の話の核心です。

重りが変えているのは「形」

重りを付けると何が起きるか。

ものは、重いほど動きにくくなります。 ハンドルの先に重りを足すと、その部分は細かく速くは震えられなくなる。代わりに、ゆっくり大きく揺れるようになります。

これが、メーカーの言う「微振動を大きな振れに変換する」の中身です。

エネルギーの総量は減っていません。 ただ、手が痛くなる高い周波数の成分が減り、比較的耐えられる低い周波数に移る。 だから「効いた」と感じるわけです。

バーエンドウェイトの働きを示した図。細かく速い微振動が、重りを付けることでゆっくり大きい振れに変換される。エネルギーの総量は減っていない
重りが変えているのは振動の「形」。細かい痺れが、ゆっくりした振れに置き換わります

つまり、こういうことです

バーエンドウェイトは、振動を吸収する部品ではありません。 振動の出方を変える部品です。 「重くしたのに全然変わらない」という場合、変換先の周波数が、 たまたま自分の手に合っていないことがあり得ます。

吸収する方式もある

では、本当に吸収する製品は無いのか。あります。考え方が違います。

エフェックスの「VIBEX」というハンドルバーウエイトの説明では、こうなっています。

ハンドル内部にゴムマウントされたバランサーシャフト自体が振動することにより、ハンドルの振動を吸収&抑制する

ハンドルの中に、別の重りをゴムで浮かせて入れておく。

ハンドルが震えると、中の重りはゴムを介しているので、少し遅れて動きます。 ハンドルが右に行くとき、中の重りはまだ左にいる。この「ずれ」が、互いを打ち消し合う。

これはダイナミックダンパーと呼ばれる、機械では古くからある手法です。ビルの制振装置も、原理は同じものが使われています。

ダイナミックダンパーの原理図。ハンドルパイプの内部にゴムで浮かせた重りが入っており、ハンドルが右に動くとき重りは遅れて左に動き、互いの振動を打ち消し合う
重りはゴムを介しているので、ハンドルより一歩遅れて動きます。この「ずれ」が振動を打ち消します

端に重りを足すのと、中に重りを浮かせるのとでは、やっていることがまるで違うわけです。

買う前に、これだけは測ってください

ここが実務的にいちばん大事なところです。

VIBEXの適合条件に、こう書かれています。

装着にはハンドル内奥行155mmの空間が必要

ハンドルの内側に、15.5cmの深さが要る。

グリップの内側にスイッチボックスの配線が通っていたり、ハンドルが途中で絞られていたりすると、そもそも入りません。 買ってから気づくと、返品もしづらい部品です。

注文する前に、細い棒か結束バンドをハンドルの穴に差し込んで、どこまで入るか測ってください。 これだけで防げます。

購入前の測り方。ハンドル端の穴に細い棒を差し込み、奥行155mmまで入るかを確認する。配線や絞りがあるとそこで止まる。内径も品番が分かれるため確認する
道具はこれだけです。棒が155mm入るか、そして内径。この2つで買い間違いを防げます

参考までに、同製品の仕様です。

エンドウエイトシャフト部総重量(1本)
Type ST102g148g250g
Type GT250g148g398g

素材はステンレス材の削り出しにPVD処理です。

そしてもうひとつ、販売ページを見て気づいた重要な点があります。

この製品は、ハンドルの内径ごとに品番が分かれています。

奥行き155mmだけでなく、内径も合っていないと入りません。 内径は、グリップを外してハンドルの端を覗けば分かります。ノギスがあれば確実ですが、無ければ取扱説明書か車種のパーツリストで確認できます。

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エフェックス VIBEX ハンドルバーウェイト

ハンドル内径(14 / 18〜19)とタイプ(ST / GT)で品番が分かれます。奥行き155mmの空間が必要です。ご自身のハンドルを測ってから選んでください。

価格・在庫・適合は変わります。購入前に販売ページでご確認ください。

選ぶときの考え方

順位をつけるより、軸を持ったほうが選びやすいと思います。

「振動が消える」と期待して買うと、たいてい肩透かしになります。 出方が変わる部品だと分かったうえで選ぶと、判断を誤りにくいのではないでしょうか。

ハンドルの中に空間が無い場合

奥行きが足りない、内径が合わない、配線が通っている——そういう車体もあります。その場合は、手が触れている側、つまりグリップで対策する方向になります。

ゲルを仕込んだグリップは、手のひらに届く振動を、グリップ自体が吸収して減らすという考え方の製品です。バーエンドのように振動の出方を変えるのではなく、最後の接点で受け止めるぶん、体感としては分かりやすい部類だといえます。

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デイトナ PROGRIP 耐振ゲル グリップ(エンド貫通タイプ)

ハンドル径φ22.2用・長さ120mmが一般的です。ご自身の車両の径と長さ、スロットル側の仕様(貫通/非貫通)を確認してから選んでください。専用のグリップボンドが別途必要です。

価格・在庫・適合は変わります。購入前に販売ページでご確認ください。

コメント欄から

動画の主役だったハンドルブレースについても、コメント欄に良い補足が集まりました。

視聴者コメント

ハンドルブレースはオフロード車で使われ始めたのがきっかけですね。凹凸の多い路面だとハンドルがしなりすぎて走りにくかったんでしょうね。逆にハンドルの剛性が高すぎると突き上げ感が出始めて、走りにくい原因になるようです。

ブレースの出自と限界を、両方教えてくれるコメントです。 起源がオフロード車だという点は一次資料で確認できていませんが、「剛性は高いほど良いわけではなく、高すぎれば突き上げになる」という指摘は、この記事で書いた話とつながります。振動対策とは消すことではなく、出方を調整すること——ブレースも重りも、その道具だという整理です。

視聴者コメント

振動が軽減されると楽になるけど振動が無いと物足りなくなる矛盾を抱えるのがバイク

これは名言だと思います。 実は、メーカーがエンジン設計でも同じ矛盾と付き合っています。ホンダはCBR1100XXで「振動の少ない4気筒に、あえてダイナミックさを加味するため」2軸バランサーを積みました。振動は不快であると同時に、バイクからの情報でもある。 全部は消したくない——ライダーの本音を、設計者も共有しているようです。

視聴者コメント

操作感はダイレクトになるけど、振動が減衰するかナ?。

疑いは正しくて、メーカー自身が「振動自体は無くなっていない」と書いています。 重りを足す方式がやっているのは減衰ではなく変換です。だから「効いた」と感じるかどうかは、変換先の周波数と自分の手の相性で決まります。効かなかった場合の次の一手(ダイナミックダンパー方式、ゲルグリップ)は本文の通りです。

出典

引用元

  • PLOT/EFFEX 公式「ハンドルバーウエイト VIBEX」(エンジンや路面からの振動がハンドルに伝わり不快感、疲労へとつながる/これまでのウエイトタイプは微振動を大きな振れに変換することで振動を緩和。振動自体は無くなっていない/ハンドル内部にゴムマウントされたバランサーシャフト自体が振動することで吸収・抑制/ステンレス材削り出し+PVD処理/Type ST 総重量250g・9,900円/Type GT 総重量398g・10,450円/装着にはハンドル内奥行155mmの空間が必要):plotonline.com

注記

  • ダイナミックダンパーの原理についての説明は、機械工学の一般的な解説に基づくものです
  • 価格・仕様は掲載時点のものです。購入前に販売ページで最新の情報をご確認ください
  • 本文の実写風写真は生成AIによる作例です。特定メーカーの製品を写したものではありません

本記事のチェックポイント

  • メーカー自身が「振動自体は無くなっていない」と書いています
  • 重りを足す方式は、微振動を大きな振れに変換しているだけ
  • 吸収する方式は、ハンドルの中でゴムに浮かせた重りが逆位相で動く(ダイナミックダンパー)
  • 買う前にハンドル内側の奥行きを測る。 155mm必要な製品があります
  • 「消える」ではなく「出方が変わる」。ここを理解して選ぶと失敗しません

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