ボア34mm・ストローク27.4mm──RC116が21,500rpmに届いた寸法
44万回見ていただいた動画の補足です。50ccを2気筒に割り、21,500rpmで14psを出したRC116。その回転数を成立させた寸法と、9段変速が必要だった理由を整理します。
「50ccで21,500rpm」
原付の排気量です。それを、いまのバイクの倍以上回している。
動画では、その異常さを軸に構成しました。ここでは、どうやってそこまで回したのかを、寸法の話から補足します。
数字を並べます
- エンジン:空冷2気筒(1気筒あたり約25cc)
- ボア×ストローク:34×27.4mm
- 最高出力:14ps/21,500rpm
- ミッション:9段
- 車重:50kg
- 最高速:175km/h以上
車重50kg。 いまの原付が概ね70〜80kg台であることを考えると、大人ひとり分ほど軽いことになります。
ボアより、ストロークのほうが短い
寸法を見てください。34×27.4mm。
穴の直径(ボア)が34mm、ピストンの上下する距離(ストローク)が27.4mm。 縦より横のほうが大きい。平べったい燃焼室です。
この形を「ショートストローク」と呼びます。そして記録には、こう書かれています。
それまで33×29mmだったボア×ストロークは34×27.4mmの超ショートストロークとなり
前のモデルから、さらに縦を詰めている。
なぜそうするのか。回転数を上げると、ピストンが上下する速度が上がるからです。この速度が高すぎると、ピストンもコンロッドも保ちません。
ストロークを短くすれば、同じ回転数でもピストンの移動速度は下がる。
29mmから27.4mmへ。わずか1.6mmです。ですがこの1.6mmが、21,500rpmという回転数を成立させる側に効いているわけです。
RC166との共通点
同じ1966年のホンダには、250ccを6気筒に割ったRC166があります。 やっていることは同じです。排気量を細かく割って、ストロークを詰めて、回転数を稼ぐ。
50ccを2つに割れば1気筒25cc。250ccを6つに割れば1気筒約41cc。 排気量が違うだけで、考え方はまったく同じです。
9段変速という数字
もうひとつ、見逃せないのがトランスミッションは9段という点です。
いまのバイクは、ほとんどが6段です。9段は、明らかに異常です。
理由は、力の出る回転域が極端に狭いからにほかなりません。
14psを出しているのは21,500rpm付近です。そこから少しでも回転が落ちると、力は一気に無くなります。 50ccという排気量では、そもそも余裕がありません。
だから、ギアの段差を細かくする。 変速するたびに回転が落ちる量を小さくして、常に美味しい回転域に留め続ける。
9段という数字は、乗り手に「一瞬も気を抜くな」と言っているのと同じです。レースの全編で、これを繰り返していたことになります。
F1が社内のライバルだった
戦績も記録されています。
ブライアンズとタベリの2選手は1966年にも6戦中3勝を挙げ、メーカータイトルを守っている
そして、この時代のホンダの状況について、興味深い記述があります。
このことが2輪GPチームに火を点け、1966年は500ccクラスにも挑戦するとともにGP全クラスを制覇するという目標を立てさせるに至った。いわばF1が社内のライバルとなったことによって、1966年の伝説が生まれることになったわけだ
社内の四輪チームが、二輪チームの競争相手だった。
全クラス制覇という目標も、外から降ってきたものではなく、社内の張り合いから生まれたという説明になります。RC116もRC166も、その空気の中で作られた機械だといえます。
いま、この話が意味すること
50ccという排気量は、日本では新基準原付への移行に伴い、区分そのものが変わりつつあります。50ccのバイクを新車で買うという行為が、もうすぐ過去のものになる。
そう考えると、50ccで21,500rpm回して175km/h出していた機械があったという事実は、いっそう不思議に見えてきます。
同じ排気量で、これだけのことができた。 排気量とは、それ自体が性能なのではなく、何をどう詰め込むかの器でしかない。 RC116は、それを50ccという極端な形で示した1台だと思います。
出典
引用元
- ヤングマシン「【ライバルはF1】1966年に活躍したホンダ 2気筒50ccワークスレーサー・RC116とは」(空冷2気筒/ボア×ストロークは33×29mmから34×27.4mmの超ショートストロークへ/最高出力14ps/21,500rpm/トランスミッションは9段/車重50kg/最高速度175km/h以上/ブライアンズとタベリの2選手が1966年に6戦中3勝、メーカータイトルを守る/F1が社内のライバルとなったことでGP全クラス制覇という目標が生まれた):young-machine.com
確認できていないこと
- ホンダ公式によるRC116の諸元ページ。メーカー自身の資料には到達できませんでした
- 現行原付の車重「70〜80kg台」は一般的な水準を示したもので、特定車種の公式値ではありません
本記事のチェックポイント
- ボア×ストローク34×27.4mm。 縦より横が大きい超ショートストロークです
- 前モデルの29mmから1.6mm詰めたことが、21,500rpmを成立させています
- 14ps/21,500rpm、車重50kg、最高速175km/h以上
- 9段変速は、力の出る回転域が極端に狭いことの裏返し
- 1966年、6戦中3勝でメーカータイトルを防衛
- 全クラス制覇の目標は、F1が社内のライバルになったことから生まれています
